開発者インタビュー
プロダクトづくりでのこだわり
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プロダクトデザイナー
UO代表 - 松田 優
「新しい懐かしい」のデザインの特徴
サクラクレパスの画材は子供の頃から、いつも身近にあった存在です。クレヨンで描いた絵を褒めてもらった嬉しい思い出や、クーピーを投げて怒られた思い出もあるかもしれません。
“SAKURA
craft_lab”の商品は“サクラクレパス”と聞いたときに日本人の誰もが思い浮かべる「なつかしい思い出」や、クーピーやクレパスなどの画材を使い自分の手でガシガシと紙にかいた「身体が覚えている感覚」を感じられることを常に意識しながらデザインしています。
クーピーやクレパスのような代表的な画材のディテールの一部を流用している点も一つですが、素材の用い方においても新しいトライをしています。
例えば001と002では真鍮の軸にサンドブラストを施したカラーアクリルで覆うことで内部の光沢がアクリルの色と重なり、塗装では表現できない深みのある表現となっています。
一般的な素材から色や形を「選ぶ」のでなく色・仕上げ自体を「つくる」ところからはじめ、”色”への根本的なアプローチを行っています。また、指で頭冠を回す際の感触や本体の重量バランスの調整など、気持ちよく使い続けられるよう目に見えない部分にも細やかな工夫が施されています。
近道をしない挑戦的な開発
毎回素材に対する新しいトライをしているため、工場に同行したり新素材のリサーチをしたりと、形を考える以前のところからデザインが始まります。
製造の難易度において近道をせず、素材の特性を理解し応用し、それが活きる形を与えることで結果的に誰もみたことのない新鮮な表現を実現ようとしています。
また、金属の重さや硬さ・匂いだとかプラスチックの透明感や繊細な凹凸など、素材そのものが持っている魅力を感じられるプロダクトであること、使い始めたその日がピークではなく、使い続ける中で味わいが増し親しみが増していくこともプレミアムなブランドである“SAKURA craft_lab”には必要な要素です。
ユーザーにはそうしたアナログな道具としての完成度を体感して頂き、自分の手でペンを握り書くことの価値を感じてほしい。身体を動かすことの軌跡が筆跡として紙に刻まれるという本質的な喜びであったり、手で描くことでしか生まれないアイデアもあるかもしれない。デジタルツールに接する機会が多い現代に「ペンを使ってかく」という行為の価値を再発見するツールになってほしいです。
ちりばめられた懐かしさと妥協のない新しさ
全てのシリーズに「クーピー」や「クレパス」をはじめとする、サクラクレパスの代表的な商品との共通点を持たせています。そのひとつが「クーピー」と同じ段差のあるペン先の形状です。他にも、いつだかどこかで見たことのある懐かしい“サクラクレパスのかたち”をちりばめているのでそれらを探しながら観察してもらえたら嬉しいです。
SAKURA craft_labシリーズの商品は、開発メンバー皆が一切の妥協なく作り込んで生まれています。膨大な時間をかけ、多くのアイデアを出し、たくさんのサンプルを見比べ、何度も作り直し、ようやく辿り着いたものが商品となり皆様の手に渡ります。私たちがプロダクトに詰め込んだメッセージを、ペンを握る手を通し伝われば嬉しいです。
わたしのオススメ
それぞれに違った魅力がありますが「005」は特に思い入れの強い商品です。
001~004までの商品では“クーピーをモチーフにしたペン先の段差”など、サクラクレパスの商品のディテールを流用して用いてきましたが、005では具象的なモチーフ用いずに全体の雰囲気から「サクラクレパスらしい、新しいなつかしさ」を醸し出すことにトライしました。
外形のシルエット、本体と一体化したサクラマーク、グリップを兼ねた繊細な溝など、新鮮な印象ながらもどこか懐かしく親しみやすい空気感が備わっています。